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低されるわけです。しかし、そういう人たちが1〜2ヵ月で正常な血糖レベルにするということの必要性はどこにもないのです。こういう場合には、目標は定めるけれども、そこに至るにはかなり長い時間がかかってきたのです。だから、良くするのにも「時間をかけてしましょうね」というような指導がいいと思うのです。
とくに網膜症の問題というのは、急激な血糖コントロールが網膜症の急性増悪のきっかけづくりになりますから、インスリンを使っての治療はとりわけ注意しなければいけません。入院された症例ですと、医師が一気にコントロールしてしまうということがなくはないのです。それは、その病歴の比較的短いことがはっきりしている軽い糖尿病の人たちではいっこうに差し支えないし、インスリン依存型糖尿病というのは、たとえ軽症糖尿病期があったとしても、やはり病歴としては非常に短いのです。長くても4、5年から数年の経過で顕性糖尿病にきていますから、そういう人たちだと急速な血糖コントロールをしでもあまり心配はないのです。ですから小児糖尿病、青年糖尿病などは短期に正常化させてもまったく問題ないのですが、50代、60代、あるいはもっと高齢の方で、そういう人が急速に動機づけられて集中的かつ強力な治療をするのはやめたほうがいいですね。その必要性もないわけですから、要は合併症の発現をできるだけ抑える。あるいは出ている合併症を進まないようにするのが主眼ですから、それには長い期間をかけて経過を見ながら適切な治療をすすめていくことが大事なわけで、決して急いではいけないと思います。
網膜症が急激な血糖コントロールで悪化するということは皆さんよく知っていますよね。医師も最近はそのことはよく知っていますから、急激で集中的な治療を中高年の人たちにするのを避けるということは常識になっていますから大丈夫だと思います。

 

 

 

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